会社は某ビルの2階にあり、ベランダに出てタバコを吸っていると、夜でも下の通りを歩いていく人ぐらいははっきり見える。
手すりに頬杖ついてタバコを吸っていると、丁度下の辺りを歩いていくお姉さんが、ビルの窓ガラスに映る自分の顔を確認して、笑顔の練習だろうか、満面の笑みを浮かべる。人間相手でないからか、あまりに無防備でかわいい笑顔だったので、そのまま目で追ってしまったところ、視線に乗せて余計なものも送ってしまったか、姉さんがこちらに振り返るので、慌てて視界の隅に入れたまま、見ていなかった風を装う。気配に気覚いて振り返る瞬間も、気配の主を確認して、また歩き出す様も、軽やかで非常に良かった。