郵便受けから事務所に新聞を持ってあがる人間が居らず、日経読みたさにいつも新聞を持ってあがる。日経と、北日本新聞。北日本新聞は、家でもとっているので、読まないか、家で読まなければ日経の後で読む。
昼頃、事務所で同僚のコーダーと広報が新聞を片付けていた。しばらくして、入り口付近に新聞が紐でくくられて積まれている。
ソファ前のテーブルには、今日の日経と、昨日の北日本新聞。
俺「今日の北日本新聞は?」
コーダー「そこにないですか?」
俺「昨日の日付のがある」
コーダー「新聞、休みですかねぇ」
コーダーよ。生まれてから齢三十にならんとするまで、実家の半径三十キロ圏内でしか生きてこなかった三十路の独身女子、Webサイト制作やら、HTMLコーディングに特化された強化人間よ。普通、新聞は水曜には休まない。
俺「今朝の北日本新聞にな、氷見のハトムギが全国展開を目論んでいるとかいう記事があるみたいなんよ」
広報「ありゃ。片付けちゃいましたかねぇ。出しますか?」
俺「ん〜。いや、いいや」
コーダー「そもそもnakazoの家は、何新聞なんですか?」
俺「北日本新聞」
コーダー「家で読めばいいじゃないですか」
俺「それは違うな」
コーダー「違いませんよ」
俺「まぁ、いいよ片付いたんなら、面倒くさいし」
広報「よくないっすよ」
なんだかんだで、体育会系な広報が、積んであった新聞をあさってくれた。
朝一番で寄った客先で、見出しだけ見かけていたハトムギの記事をさらっと読んで、これまた一緒に働いているハカセに見せる。
ハカセはニュースはネットで済ましていて、普段新聞とか読まない。
俺「ホラ、ハカセ。ハトムギやら農協やら、なんだか忙しそうだよ。ネタにならないかねぇ」
ハカセ「へぇ……」
広報「ん?nakazoは新聞に何書いてあったか知ってたんすね」
俺「言ったじゃないか。氷見のハトムギがどうちゃらって」
広報「そのための、あの会話だったんですか?」
俺「うん」
うん。と返事はしたものの、俺とコーダーの会話が、おそらくもの凄く回りくどくて、しかもズレて決着していることを、改めて知らされる。
人から指摘されると、それはそれで愉快なんだか座りが悪いんだか、よくわからない。