天然コケッコー1〜14

投稿者: | 2004年4月11日

よく考えてみたら、くらもちふさこをまとめて読んだのは初めて。
昨日、家人がYoungYouを買ってきて、何故、最近の槇村さとるのマンガはわくわくできないのかというハナシになって、かえって、自分の中で『天然コケッコー』が腑に落ちた。丁度、この『天然コケッコー』と同じ時期に連載していた『おいしい関係』が、克服、獲得系の単純なストーリーから、個体としての女への考察に拡大していった時期に、くらもちふさこは、綿々と、登場人物の、個としてのくだらない日常をきちんと描き出す恐ろしい作業をしていたわけだ。
商品として、対象とする層の違いや狙いについては置いておくとして、『天然コケッコー』の安定感は、登場人物の誰に対しても肩入れしない、くらもちふさこのクールさとにある。くらもちふさこが担保するのは、ユーモアを忘れないスタンスと、性善説的な展開だけである。
どの内心にも過剰には立ち入らず、誰かが誰かの立ち位置を変えてしまったり、定員一名の場所を、複数の人間が争う様な事件の無い日常性の中で、登場人物の葛藤もあくまで日常の一部の、瑣末な重大事であり、日常のなかで葛藤する以上、精神的な危機とそこからの再生の様な物語的なダイナミックさは無く、ごまかしや逃避、解決にならない解決を選択しても、時間がきちんと経過して、何もかもを推し進めていく。
この作業は、ストーリーにはっきりとした力点を定めて展開させるよりも、牽引力の強さを確保する腕力が必要なのではないだろうか。いかに語られるのかという興味だけで読み進めてしまったが、普通の日常はくだらない主義の徹底ぶりは、充分な引きになっていた。勉強になるなあ。
個人的には、そよちゃんみたいな女は願い下げというか、怖いので、とても辛かったけど(笑)。

天然コケッコー1〜14」への2件のフィードバック

  1. mobachiki

    コケコッコーといえばグーグーガンモだろ

  2. nakazo

    あれ実は、火の鳥の無限ループへの導入。超危険やで。半平太君、大人になったら鼻でかくなるねん。

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