12巻。
また、形式の模索期か、あきらかに低調。
「岸和田の姫」「息子」は、大名の姫君、似た者同士の職人の親子という典型パズルが上手くいった例と考えて良いだろうか。
どちらも、上手くはいっているが、積み木を上手く積んでいるだけで、コントラストに欠ける。
これまでシリーズの中で、もっと鮮やかで美しい数行に度肝抜かれたことがあった以上、これは並。
普通の捕り物よりも、人の情が原因で起こる事件を扱ってきた訳だが、開始時から固定した人物造形、人間関係を用いて進めるのではなく、本人が意識せず、周囲も気覚かなかった心理作用が引き起こす事件にまで、守備範囲を広げようとしている。
事件を起こして、それを隠すのではなく、現在進行で、それは何故?が進んでいく。
わからなくもないけれど、結局、いろいろ浅いままハナシが終わってしまうのはいただけない。
「江戸の田植歌」ここまでのワースト。この巻周辺は、流れの再確認のため、後で再読。
続行。
収録作品
・酉の市の殺人
・春の摘み草
・岸和田の姫
・筆屋の女房
・夜鴉おきん
・江戸の田植歌
・息子
・源太郎誕生