御宿かわせみ修行『お吉の茶碗』

投稿者: | 2004年7月12日

20巻。
「お吉の茶碗」。

だが、奉行所の人々も、通之進も東吾も知らなかった。

と、作者が解説に出て来て、本当に解説して落とす!強引な背負い投げ食らってしまった感じ。
お吉の手もとに帰って来た茶碗が、実は萬古焼で、下手をしたら、何百両で欲しいという人間が居る価値のあるものだと、本当にこれを作者が出て来て解説する必要があったんだろうか。

誰の手から誰の手へ移り、廻り廻って佐賀町の店のがらくたの中に混じったものか。
欲しいとのぞむ人なら、何十両、いや、何百両でも出そうという沼波弄山の茶碗で、お吉は今日も満足そうに飯を食べている。

お吉の人物像を、ここまで練って来たから、その利子のおかげで「お吉は今日も満足そうに飯を食べている」と書かれたら、それでそこそこ満足できる。それでも、このハナシの中でも、丁寧に、締くくりの布石として、お吉がそそっかしいので、これまでも幾つも自分の茶碗を割っていること、一旦、証拠品となって、召し上げられたものの、盗みと関わりないものについては、返却されることになり、奉行所から通之進、通之進から東吾を経て、その間、誰も茶碗の価値に気覚かずに居たこと等も用意されている。
通之進が気覚かない、通之進ですら気覚かないというので、この落ちの価値があがるという読みは、アリなのかもしれないが、贔屓のひきたおしというもの。通之進の眼前で、東吾が茶碗をひろげて、

「お吉が喜びますよ。あいつ、とても気に入って、これで大飯を食っていたんです」
いそいそと東吾はそれをもらって兄の屋敷を辞した。

ときて、作者の解説に入るのだから、東吾が箱を開けて、初めて茶碗を見た通之進が、自信はないけれど、ひょっとして……。と、後日、それとなく東吾に伝えるけど、そんな事をお吉に言うと、大騒ぎになるので、そのまま無かったことにするとか、とにかく、作者解説でない、スマートな方法があったのではないかと思う。
期待しすぎか?
続行。

収録作品
花嫁の仇討
お吉の茶碗
池の端七軒町
汐浜の殺人
春桃院門前
さかい屋万助の犬
怪盗みずたがらし
夢殺人

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